「地電気を自記する機械」復元機を納品しました。

すっかり年末、すっかり冬ですね。スタジオバニマです。

研究案件でした。

佐賀県多久市郷土資料館に「地電気を自記する機械」を復元製作したものを納品しました。
これは明治時代に多久市出身の志田林三郎が発明、製作したものを当時の資料から復元したものです。

資料から、とは言え残っているのは当時の学会誌と数点の写真のみ。
制作にあたっては国立科学博物館 理工学研究部 前島正裕先生の指導の元挑みました。

学会誌には理論的なもの、仕組みの説明があるのみで、細かい寸法や材質などは残っておりません。
トライアンドエラーあるのみです。

 

片っ端からいろいろな材質を試す

 

こんな材質も!(プラチナです)

 

隙間に発生する毛細管現象のテスト

 

毛細管現象を利用した接点の試作。こういう時3Dプリンタは大活躍!

隙間に水が吸い上げられているのがわかりますか?

 

気が狂いそうなほどのテストを経て、制作にかかります。

 

拡大鏡越しに配線

配線作業

 

細い線は絹で絶縁被覆が出来ている「絹巻銅線」。芯線は0.15mmの銅単芯、被覆込みで0.2mmの極細です。
写真でぐにゃぐにゃしているのは失敗ではなくwああしてバネ性を持たせて機械の揺動に追従させるためです。
この辺は資料の挿し絵から拾って判断しています。

記録側には本来青酸カリと硝酸アンモニウムの混合液が使われていたようですが、現代では扱いが難しいので全く別の材質を同じ方法で使用できるように作っています。
材料の選定も色々有りましたが、ターメリックを酸化させる方式で落ち着きました。

動力にはぜんまいが採用されています。ちょっと現代的ですけどねw

 

で完成状態がこちら。

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黒い樹脂は「エボナイト」といって当時最新、現代では入手困難な材質です。
ゴムに硫黄を混ぜて加熱したもので、国内だと一社のみの製造。
加工はフライスですが、硫黄分のせいで工作刃へのダメージが物凄く、チープな使い捨て工具のように超硬エンドミルが使われました。
金色は当然真鍮の削りだしです。
市販品はゼロです。

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検知部のコイルは絹巻銅線を500回位手で巻いています。
磁石はフェライト磁石。
糸類は宮大工が使う、絹でできた太い糸(全く伸びない)を使っています。

 

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記録部は打って変わって銀色。これは洋白といって銅と亜鉛とニッケルの合金です。
身近なとこだと500円硬貨がソレです。(配分は違いますが)
細い串の様はのは鉄道模型用のもの。ローラーに巻いてあるのは特注品です。
ちなみにこのローラーがまた…この太さの無垢木材が中々無く苦労しました。
結果、四万十ひのきの丸太から削り出しています。
黒い円柱はもちろんエボナイトです。

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記録紙に電流の偏移が記録されていってますね!

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こんな感じになります。

 

根本の理屈は今や小中学生でも分かる「電磁石」「毛細管現象」「電気分解」などです。
そんな基礎的なものの組み合わせで地面を走る微弱な電気を検知し、それを元に地球や太陽の活動まで知ろうとする…この広がりが素晴らしいと前島先生は講演でお話されていました。

まさにそのとおりだと思います。

 

私が制作の中で一番おもしろいな、と思ったのは…
少ない資料の中で試行錯誤を繰り返し、やっと動くものが出来た時にふと昔の資料写真を見るとほとんど同じ大きさ、おなじ形状になっていることでした。

写真から形状や寸法を追って行ってたらきっとそこにはたどり着かず、本質を研いでいったら同じ所にたどり着くんだと思います。

 

 

多分ねw

 

 

 

 

多久市様(市長が愉快)/多久市郷土資料館様/国立科学博物館 前島正裕先生/ノムラテクノ様

thanks.有限会社シモダ(レーザー加工番長)/藤原製作所(旋盤番長)/森山製作所(フライス番長)/グリップ(樹脂加工番長)/マイクロパワー研究所(絹巻銅線手配)/フェア 原田様(基礎実験協力)

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